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注目記事 (2004/6/14)

Opinions:
 
「世界経済に地政学リスク」
伊藤隆敏 (東京大学教授)
  
   世界経済は順調に成長して居り、なかでも日本の景気回復は目覚しいが、その中で最大の懸念は「地政学的なリスク」である、と伊藤教授は言う。原油価格の動向、イラク情勢により米国が不安定になると、世界経済に大きな影響が出る。
   好調な米国で大きな話題となっているのが、経常赤字の拡大である。日本からみれば、米国自身が財政赤字を減らすことが一番であるが、米国が、アジア、それも各国事情が異なるにも関わらず、十把一絡げに為替操作を行っていると非難しているのは問題である。しかし今後も当面はドル高傾向となろう。
   日本の回復を現在リードしている輸出は、過去五年間のデフレ期間を通じ、企業競争力が高まったこと、対ドルにリンクしていない通貨に対しての実効ベースではそれほど増価していないこと、などにより好調を維持している。
   日本にとっての最良のシナリオは、このまま景気回復が続き、中国・米国が減速する前に、景気のけん引役が外需から内需(とくに消費)に移行することである。そのためには、景気回復が本格化して、デフレからの脱却がはっきりするまでは、金融政策は、現行のゼロ金利、量的緩和政策を維持すべきである。それも、心理効果を勘案すれば、デフレの解消に止まらず、日銀は積極的に若干のインフレを目標にすべきである、と伊藤教授は主張する。
英語の原文: "Geopolitical Risks in the Global Economy"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20040614_ito_geopolitical/
 
Debates:
 
「社会主義の日本は資本主義の中国より遅れている」 
石塚雅彦 (フォーリン・プレスセンター評議員)
  
   日本人は、未だに中国が社会主義を信奉していることをもって未熟であると見下す傾向があるが、実際には今日本の方が社会主義的であり、中国の方が資本主義を採用して急成長を遂げている、と指摘する。
   日本の戦後から1990年代までの成長を支えたのは、「上からの資本主義」であったが、中国が今、社会主義の名の下に実践しているのは当時の日本と同様の施策である。世界の多くの資本主義は、米国を例外として、何れも、強制的な「上からの資本主義」に始まり、「下からの資本主義」に成長した。
   しかし日本では、90年代に入り、上からの資本主義が行き詰まったにも関わらず、「下からの資本主義」に転換できなかった。それどころか、民間の四大銀行の合計に匹敵する郵便貯金とか、道路公団問題で表象される公的機関の運営の不透明性・不採算性・無責任体制はむしろ社会主義が行き詰まるに至ったと全く同様の事態を来たしている。
   政治的観点からは、資本主義の発展段階は、概ね民主主義に対応する。個人や法人が国に頼るような現状は、即ち日本の民主主義が弱体であることの表れであるとも指摘されている。
英語の原文: "Socialist Japan lags capitalist China"
http://www.glocom.org/debates/20040609_ishizuka_socialist/
 
Debates:
 
「回復には新たな市場が必要」 
佐和隆光 (京都大学教授)
  
   佐和教授は、日本の経済回復はまだら模様であり、全般的な回復を期待するのは楽観的過ぎるのではないかとの懸念を表明する。なかでも、企業の業績回復は、IT技術の応用による雇用の削減であり、失業率が目立って減って行くかは疑わしい。重要なのは、消費の回復であり、それには、新たな大量市場商品が必要である。
   デジカメ・薄型テレビ・DVD録画装置が新たな一般大衆向け電子製品と言われているが、これは所詮従来の旧型商品の置き換えに過ぎず、新たに大きな市場を創出するものではない。昔であればモノクロテレビ・冷蔵庫・洗濯機、最近では、パソコン・カーナビ・携帯電話が新たな市場を創ってきた。経済活性化には、革新的な一般向け商品の開発が必要である。
英語の原文: "Recovery needs new markets"
http://www.glocom.org/debates/20040608_sawa_recovery/
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