GLOCOM Platform
debates Media Reviews Tech Reviews Special Topics Books & Journals
Newsletters
(Japanese)
Summary Page
(Japanese)
Search with Google
注目記事 (2005/1/24)

Opinions:
 
「新たな三極安全保障体制の出現か?」
 猪口 孝 (東京大学教授)
  
   現在の世界、就中東アジアを方向付ける大きな力が三つある。それらは、米国の卓越・グローバル化の深化、そして国境による制限を受けずに地域に影響を及ぼす国際的勢力である。強力でありかつ至るところで見出されるこれらの力の影響を考慮することが、東アジアを考える場合に肝要である。
   1960年代後半から1970年代にかけて、大きな一人あたりGNPと貿易量を背景にした日・豪・米の三国による経済一体化が、言わば最初の三極の実質的同盟関係であった。しかしその際には、日・豪の二カ国は安全保障面では殆ど貢献していなかった。そして2000年以降現在までが、二度目の実質的同盟関係状態にあるが、一度目との大きな違いは、貿易量や経済力を中心にしただけのものではなく、地域の安全保障を視野に入れていることである。
   現在の日豪間の実質的同盟関係は四つの要素から成り立っている。両国とも米国主導による安全保障の枠組みに組み入れられていること;両国とも平和維持活動に大きく関わり始めていること;両国とも海上での警備行動への協力を志向していること、そして両国政府とも米国の強い指導力の下にあること、である。
   この実質的な同盟関係はまた幾つかの特徴を有する。米国の支配力の下にあること、他のアジア諸国との協力を志向していること、そして国境を越える諸勢力への対応を模索していることである。そしてこれらを含む様々な兆候によって、現在、日本と豪州は同盟関係にあるように見える。

英語の原文: "An Emerging Security Triangle? A Japanese View"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20050124_inoguchi_emerging/
 
Debates:
 
「津波が去って:人命の安全確保が鍵」
 エリック・T.C・チョウ(シンガポール国際問題研究所(SIIA)事務総長)
  
   先の津波の影響とも言える現象を幾つか指摘したい。
   まず、従来の戦争やテロと言った「ハード」な安全保障だけでは無く、自然災害をはじめ、伝染病・環境破壊・人身売買と言った様々な悪に対する「ソフト」な安全保障の必要性が改めて認識された。
   次に、米国流の対テロ強迫観念が一時的にせよ和らいだことが挙げられる。今回被害を受けた国の多くでは反政府勢力の活動があり、それらの拠点も被害を受け、そして救助を受ける過程で、途上国内での富の不均衡を元とするテロと、米国を攻撃する国際テロとは必ずしも同一では無く、途上国の場合はまずは富の増強と分配の公平化を図る必要があるのではないか、という視点が改めて注目された。
   また、この大災害に際し、宗教的対立を乗り越えた救助活動が行われたことも特筆すべきである。今回の非常時には「文明の衝突」は発生せず、援助側・被援助側も宗教上の確執に囚われることは無かった。更に、救済活動を通じてアジア諸国間の善意と協力の連携が強化されたことは将来に期待を抱かせるものである。

英語の原文: "After the Tsunami Disaster: Human Security is Key"
http://www.glocom.org/debates/20050124_cheow_after/
 Top
TOP BACK HOME
Copyright © Japanese Institute of Global Communications