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注目記事 (2006/2/6)

Opinions:
 
「より良い日ロ関係を築くために」
 本田敬吉  (日本経済研究センター・シニアフェロー)
  
  ロシアはこのところ話題になっているBRICSの一員として、また最近成長が著しい広域アジア地域の一員として注目を集めており、日本にとっても昨年後半の日ロ首脳会議の結果を踏まえて、今後お互いに関係を深めて行くことが考えられる。したがって、現在の時点で日ロ関係を歴史的および地政学的な観点から総括的に理解しておくことは非常に重要ではないだろうか。
  まず第一に、ソ連邦崩壊後15年経っているが、日本との関係進展という意味では「失われた15年」としか言いようがない。ソ連邦政治体制がCISを含めたロシア共和国体制に移行して行った期間中に日本がなしえたであろうことは沢山あった。にもかかわらず北方領土問題だけにこだわって、関係進展が停滞したのはとても残念といわざるをえない。しかし徒に過去を振り返るのではなく、今からでも「失われた15年」を取り戻す経済政策や外交政策はいくらでもあると思う。例えば、北方領土を含む北東ロシア地域広域総合的開発に両国が共同で取り組む具体的な案件は多くの部門で見つけることができる。
  第二のポイントは、ちょうど英国がヨーロッパとアメリカの間に立って過去何世紀にもわたり賢明な外交政策運営をしてきたように、日本も地政学的にいえば同様の立場に立てる可能性がある。これから世紀的時間で伸びていく中国とそれを心配して見ている欧米(特に米国)両大陸の間に立って、日本が果たすべき役割はたくさんある。中でも「チェック・アンド・バランス」の役割を果たすことが重要だ。昨今日本はインドに急接近しているが、それだけでは近視眼的な戦術に過ぎず、やはりロシアや東南アジアなどを含む広域アジアとの関係のバランスをよく考えて戦略をたてるべきである。その点で、日本とロシアとの関係の改善は非常に遅れているといわざるをえない。それは日本側とロシア側の双方に責任があると思われる。
  この点で興味深い事実は、日本とロシアは人口規模が1億2千万から1億5千万の間で、似通っているという点である。これはあまり認識されていないが、例えば中国やインドと関係を深めて行く上での問題は、人口の規模があまりにもかけ離れており、日本からみて相手国全体の問題点を把握しかつ理解することは並大抵ではない。他のアジア近隣諸国の経済または人口の規模は、日本に比して小さすぎるという逆の問題もある。その点日本とロシアはお互いに全体の動きを把握しながら相互理解を進めやすいはずである。
  第三のポイントは、1960年頃まで大学で学んだ日本のエリート層は、モスクワアカデミーのマルクス経済学をはじめ社会・自然科学の学術書をよく読み、その理論的な明快さに心酔しソヴィエト社会体制から多くを学んだ世代であった。さらにその世代は、ロシアの文学や音楽に愛着を覚え、その結果としてロシアに対する文化的ノスタルジアが強い。そうした古典的な愛着が徐々に忘れられていくのは残念で、復活したほうがしないよりはいいのではないか、と思う世代が私を含めて残っている。そのために、重要なのは単に外交的な努力だけではなく、民間企業や市民レベルの交流ではないだろうか。この点で最近トヨタのロシア進出が決まり、又ここにきて天然ガスなどの資源問題が進展して来たので、これからは民間の経済先行で対ロ関係が改善していくと予見する。それが昔からのロシアとの深い絆を復活させ、さらに相乗効果で関係改善を促進することが望まれる。
  最後に、ロシア側の問題として、ロシア経済がBRICsの一員と持ち上げられてはいるが、実態はまだ発展段階説型の自力成長経済構造に転換されていない点を指摘しなければならない。同国経済は最近の資源価格高騰によって潤ってはいるが、国内投資の対GDP比率は未だ20%にも達せず、明らかに他のアジア諸国に比べても低い状況にある。ロシアには膨大な科学技術の蓄積があるのだから、それを早く軍用から民生・商用に転換して、もっと付加価値の高いものを作っていくようにすれば、 迅速かつ大きく変わっていくだろう。ロシアにはそれだけの潜在力があるので、それを日本との関係で一日も早く組織的に市場原理に載せて動員していけば案外その転換は早くやってくると信じている。

英語の原文: "Toward Better Japan-Russia Relations"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20060206_honda_toward/
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