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注目記事 (2006/5/1)

Opinions:
 
「政府資産の売却は決め手にはならない」
 池尾和人  (慶應義塾大学教授)
  
  財政健全化策として議論されているプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化が達成され、公的債務残高の対GDP比で見た発散を止めることができたとしても、債務の絶対水準は、GDPの2倍といったものになると見込まれる。この水準は、長期的に維持していくには明らかに過大であり、従って、プライマリーバランスの黒字化に加えて、公的債務残高そのものの圧縮が、避けられない課題である。
  公的債務残高の圧縮の方法は、基本的には二つしかない。一つは、増税と歳出削減によって財政黒字にして、借金を返済していくというものである。もう一つは、政府保有資産の売却である。今、増税と歳出削減という、人気を得られない政策はあまり採用したくないということから、資産売却に関心が集まっている。
  先日、自民党財政改革研究会の資産圧縮プロジェクトチームが、政府資産を112兆円圧縮すると提案した中間報告をまとめた。しかし中身を詳しく見ると、このうち実際に債務圧縮に使えるのは約12兆円に過ぎない。普通国債の発行残高だけで526兆円になるのに対して、12兆円というのはいささか過少である。即ちネットで見ても日本の財政赤字の現状は深刻であるといえる。

英語の原文: "Selling Government Assets Not a Cure"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20060501_ikeo_selling/
Debates:
 
「拉致問題と六カ国協議」
 ジェームズ・L・ショフ  (外交政策分析研究所(IFPA)上級研究員)
  
  北朝鮮による日本人拉致被害者の夫が韓国人拉致被害者であったという日本政府の発表は、この問題に対し夫々異なる姿勢で対応してきた日韓両国を心情的に近づけるかも知れない。しかし米国がこの問題に関わることは、第二次対戦中に日本が犯した韓国人に対する強制労働や連行という問題から発する日韓外交関係の地雷原に足を踏み入れることになる。
  90年代後半に至り、拉致被害者家族はまとまって政府に対し拉致問題に関する行動を要求したが、当時の日本政府は証拠不足と他に優先事項あったことからこれを採り上げることはせず、一部の右派勢力が宣伝に利用したのみであった。2002年に金正日が拉致を認めてからは日本中が家族の支持に回ったが、家族は引続き一部右派政治家との結託を続けた。家族が出席する集会等で行動を共にするのは、1930〜40年代の日本による大陸侵略の歴史について、教科書を改変させようと画策している勢力である。
  このような状況の中で、米国が拉致被害者の味方をすることは、中韓の不快感を呼び起こす。家族の味方をすることは、日本の国粋主義者を支援することになるからである。米国政府は、今回の経緯を、地域に対する影響力保全手段としての人権問題の材料として利用しようとしている節があるが、これは危険である。米国は、拉致問題に至るまでの日本と朝鮮半島との長い捩れた関係に首を突っ込むことなく、当面の最重要課題である北朝鮮の核問題、延いては六カ国協議に外交努力を傾注すべきである。

英語の原文: "Abduction Diplomacy and the Six-Party Talks"
http://www.glocom.org/debates/20060426_schoff_abduction/
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