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注目記事 (2006/9/19)

Opinions:
 
「日米間で包括的な経済連携協定を」
 本田敬吉 (日本NCR特別顧問)
  
  日米関係について、「構造協議」が行われた1980年代後半には、米国から見て日本の経済社会は「異質」だったが、それもその後の日本自らの努力で改革が進み、いまや米国と日本はほぼ「同質」の経済社会になったといえる。また実質的にも両国の経済社会の相互依存関係は大きくなってきている。
  その一方で両国関係の「希薄化」という現象が起こっていることも確かである。このまま放っておくと、日本人の多くが今後は中国との関係がより大切と思い込む可能性がある。しかしそれは非常に問題があり、日本と中国との経済社会体制が大きく異なること、また将来米国と中国との間の関係が悪化するかもしれないといった可能性をも想定すると、日本が米国と同じ価値観や経済社会体制を共有し維持していくために、ここらで日米間で何をしたらいいかを考えるときにきているのでないか。
  それでは日本は具体的に何をすべきか。現在私も参加して日本経団連のアメリカ委員会で検討しているのが、単なる「自由貿易協定」(FTA)を超えた包括的なパートナーシップ、つまり「経済連携協定」(EPA)を締結するという案である。これは単にモノだけでなく、サービス、さらにヒトの交流や制度的な問題にかかわるすべての面で連携していこうという包括的なものである。これはイメージとしては、EUで採択された2つの原則、「相違の相互認識」と「最小限の調和」を図るということを日米間でも実施するわけで、そうすれば日米間の絆は制度的によりしっかりしたものになると思われる。
  その際、そのような協定締結にとって障害となる2つの大きな課題が日本側ある。1つは、もちろん農業問題。2つ目は、経済のみならず、教育や官僚機構を含めた幅広い分野での人的交流についての制度などを抜本的に見直さなければならない。例えば、日本の学校ではネイティブな英語教師をもっと雇って英語教育を充実させることを考えるべきである。
  その一方で、アジアの視点から、日本がますますアジアから離れて米国に近づき、アジアが日本抜きで経済共同体を形成する方向に走るのではないかという懸念があるかもしれない。しかし私は、その心配はほとんどないと思う。実際に日本のビジネスは中国やアジアで大きく成長し、パイプが太くなっており、また中国やその他の国もその点は現実的なので日本を無視することはないはずである。ただこの日米間の協定が政治的な色彩を帯びれば、それだけ中国や他のアジア諸国は警戒する可能性があるので、これはあくまで「経済的」な連携協定であることを再確認する必要がある。
  現在日本はアジア諸国とEPAの締結を模索しているようにみえるが、日本とアジアとは経済の発展段階や経済社会体制が国によってはまだ大きく異なるので、個別に二国間のFTAは出来るとしても、包括的なEPAとなると非常に長期に取り組んでいかなければうまくいかないのではないか。それより経済社会で同質的な米国とのEPAがより現実的で、アジアに対しても将来の包括的なEPAのスタンダードを構築することになるであろう。

英語の原文: "Toward an Economic Partnership Agreement for Japan and the U.S."
http://www.glocom.org/opinions/essays/20060919_honda_toward/
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