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注目記事 (2007/2/5)

Opinions:
 
「ウェブ2.0への日本の対応」
 石塚雅彦 (フォーリン・プレスセンター評議員)
  
  これまで専門家にしか得られなかった知識が容易に手に入れられるようになり、また一部の人にしか許されなかった世界中に向けての発信が誰にでも出来るようになった新しい時代を形容する概念として、「ウェブ2.0」が急速に広まってきた。
  ジェームズ・スロウィッキーは、「大衆からなる集団は、どんなに頭脳明晰な一握りのエリートよりも賢い」と主張したが、これは、トーマス・カーライルの「世界の歴史とはまさに偉人伝である」とする見方とは対極をなす。エリート主義と大衆主義は常に歴史の中で鬩ぎ合ってきた。ホセ・オルテガ・イ・ガセトは『大衆の反逆』で一般大衆の愚かさを罵倒した。
  しかしウェブ2.0の世界での大衆は、愚かで無知な群集ではない。個人一人一人が世界に向かって発言することができる。ウェブ2.0の教義に拠れば、人類史上初めてという、個々人の意見か遍く共有できる状態から集約されて生まれて来る意見は、少数のインテリにより考え出されるものより賢いものとなる。梅田望夫の『ウェブ進化論』では、たとえばグーグルなどは「神の視点」から「知の秩序」を構築するとしている。
  「神の視点」という考えは、アダム・スミスの「神の見えざる手」を連想させる。ミルトン・フリードマンは『選択の自由』の中で、大衆より優れていると自ら思っている公務員や知識人を徹底的に攻撃した。また、英国のサッチャー首相も公務員の傲慢さを嫌悪していた。ウェブ2.0に関わっている人達にはフリードマンやサッチャーの知識はあまり無いかも知れないが、所謂オンライン革命の中にはこのような所謂保守主義の概念が含まれている。
  ウェブ2.0が民主主義の究極を体現できるのではないかとの見方もある。しかしもし仮にそうであっても、民主主義自体、完璧な社会とは同義ではない。
  しかし今の流れを止めることが出来ないのであれば、我々の社会が、それに対応できるようにして置かなければならない。例えばプライバシーの侵害や悪用など、オンライン社会としての負の側面も既に現れている。政治家がインターネット社会の衝撃を理解しているかも不明である。例えば保守主義を信奉する安倍首相は、ウェブ2.0に内在する保守主義的要素に気付いているのだろうか。

英語の原文: "How will Japan Face Challenges Posed by Web 2.0 World?"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20070205_ishizuka_how/
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