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注目記事(2007/6/11)

Opinions:
 
「日本のFTAのため政治決断を」
 伊藤隆敏 (東京大学大学院教授)
  
  4月に締結された米韓FTAは日本にとって衝撃的な意味を持っている。 第一に、このFTAは真のフリートレードに近く、米側は農産品以外では100%の自由化であり、韓国はコメ(自由化から除外)と牛肉(段階的関税撤廃)以外の農産品について自由化に同意、農産品以外では99%の自由化に同意している。ここまでの自由化を予想した人は多くなかった。
  第二に、韓国が対米FTA合意の後、直ちにEUとのFTA交渉に入ったことで、もし韓国とEUが合意すると、比較的関税の高いEU域内で、韓国製品が日本製品を駆逐していく可能性がある。
  日本がこれまでにFTAを締結したのは、シンガポール、メキシコ、マレーシア、フィリピン、チリ、タイの6カ国。さらに、インドネシア、ブルネイとASEAN10カ国全体との大筋合意がある。オーストラリアなどとは現在交渉中。 ところが、この日本のFTA(またはEPA:経済連携協定)には問題があり、いくつかの発展途上国よりも、日本の自由化率が低いという恥ずべき状態にある。
  この主因の一つは農業部門の保護、高関税である。日本国内では関税を撤廃すれば農業は壊滅的な打撃を受けると反対論が根強い。 だが韓国の例からもわかるとおり、交渉の過程でコメ等を除外することは不可能ではない。
  さらなる反対理由として、日米がFTAを結ぶと世界のGDPのおよそ40%に達してしまい、自由貿易の枠組みを決める議論に悪影響を与え、途上国が反発するという指摘もある。 しかし日米のFTAは他の国に対して高関税を課す貿易ブロックではないことは明らかである。
  今後の日本のFTA交渉では、まず交渉中のオーストラリアとは速やかに合意にこぎ着け、さらに米国やEUとのFTA交渉に向け、できるだけ早く相手国と共同研究を始めるべきである。 また、自由化率の高いFTAを締結すべきであろう。
  韓国が各国と結ぶFTAによって、日本企業が不利益を被ったり、その不利益を避けるため日本企業がその国への投資を加速してしまう前に、日本は米国やEUとのFTAの推進が必要で、早期の政治的な決断が望まれる。

英語の原文: "Political Decisions Urgently Needed for Japan's FTAs"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20070611_ito_political/
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