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注目記事(2007/7/30)

Opinions:
 
「北朝鮮とイラクのリンク:日本への意味」
 ロバート・デュジャリック (テンプル大学現代日本研究所所長)
  
  東アジアでは、9.11以来、また特にイラク開戦以来、米国のコミットメントが徐々に低下し、このところ米国の軍事、諜報、外交の資源がますます中東、特にイラクに移されている。したがって、もし北朝鮮が崩壊するようなことがあれば、米国はもっぱらイラクと多少ではあるがアフガニスタンに多くの軍隊を集めているので、韓国の軍隊を増強するために米兵を送ることはかなり難しい。仮にイラクからの撤退を決めても、中東の安定のためにかなりの米軍が中東地域にとどまらざるをえないであろう。
  もちろん、これは米国が東アジアから手を引くという意味ではなく、依然として東アジアで最強の力を維持する。しかし、それでも米国のプレゼンスは本来あるべき水準にとどまることはできない。ブッシュ政権は、北朝鮮との間で非難応酬を繰り返した後、最終的に北にかなりの譲歩をすることを決定したが、それが「悪の枢軸説」を額面通り信じていた日本政府にはサプライズとなった。日本人で米国に裏切られたと感じた向きもあったかもしれないが、米国としては自ら負ったイラク戦争の傷の結果として、他の地域で妥協することを免れ得なかったといえよう。しかも、中東ではイラクだけが問題ではなく、イランやパキスタンの情勢も予断を許さなくなっている。
  それでは日本はどうしたらいいのだろうか。まず日本は、しばらくは北朝鮮問題の「解決」が中東情勢によって妨げられることを覚悟しなければならない。日本が中東地域に対して出来ること、また米国の中東政策に影響を及ぼすことは極めて限られており、米国の次期大統領が誰になっても、この状態は変わらないであろう。そこで日本としては、東アジアでの問題にかかわる際に、孤立を避けて米国との関係を強化するように努力すべきである。そのために、日本は拉致問題にこだわらずに、六カ国協議から孤立せず、積極的に現在の交渉過程に参加していかなければならない。同様に、北朝鮮だけでなく、韓国や中国とかかわりをもつために、日本は「歴史問題」にもっとうまく、またもっと徹底して取り組む必要がある。この歴史問題は、道徳的な問題というよりも戦略的な問題と考えて、日本政府は慰安婦問題の取り扱いで犯した誤りを繰り返さないようにしなければ、アジアで重要な役割は果たせなくなるであろう。
  さらにいえば、六カ国協議で焦点が当たっている北朝鮮の核の問題も、過去に今の北朝鮮よりはるかに危険なソ連が大量の核を保有していたり、中国があの文化大革命の時代にも核を持っていたことに鑑みると、それほど危険視する必要はないといえる。また核拡散についても、北朝鮮はアルカイダを支持しているわけではなく、アルカイダ支持者の多いパキスタンに比べると危険度は低く、したがって、北朝鮮の核問題は重要ではあるが、喫緊の課題とはいえない。
  むしろ日本としては、現在の北朝鮮との交渉を超えた視点から、ちょうど欧州のOSCE(欧州安全保障・協力機構)のように、東アジアにおいて六カ国協議を一種の地域安全保障機構のようなものにしていくといった展望を持つべきではないだろうか。もちろん六カ国は同盟国ではないが、人道援助、海賊対策、海上交易、環境対策といった地域全体にかかわる問題を一同に会して議論することは可能で、日本はそのような問題に大きく貢献できるであろう。それによって、米国が中東政策によって東アジアから部分的に引いていく隙間を埋めて日本がプレゼンスを高めることが十分に考えられるのである。
英語の原文: "Linkages between North Korea and Iraq for Japan"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20070730_dujarric_linkage/
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