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注目記事(2008/1/7)

Commentary:
 
「日米中三国関係の時代の到来か」
 モートン・アブラモウィッツ (米国センチュリー・ファウンデーション上級研究員)
  
  東アジアの今後の発展は、主に地域や世界全体の経済統合および開放・移動・民主化の進展によって決定付けられ、ナショナリズムや日中間の摩擦や中国台頭の不確実性や軍事増強などによって左右されるものではないといえよう。東アジアは今まさに日米中の関係がプラスに作用する時代の幕開けを迎えているが、そのためには国内政治が邪魔しないことが大前提である。
  重要なのは、中国も日本も米国も勢力拡大を狙う状況ではないという事実である。まず、中国は急速な成長で注目を集めているものの、実際には国内の経済成長や歪みの是正やオリンピックの成功や体制の維持に腐心している。そのような内向きの姿勢は、この地域を安定化させ、中国帝国主義の恐れを抑制する効果をもたらしている。いずれにしても、中国はまだ国際社会での指導的な立場には程遠い。次に、米国については、新しい大統領が消耗な戦争を引き継がなければならず、国内での対立と政府の弱体化によって政策転換が難しくなっている。テロや移民の問題に次いで中国の問題がクローズアップされる可能性が高いが、現下の金融問題の悪化が米国の国際的影響力に微妙に作用するであろう。しかしそれでも米国の強大な力を、日本も中国も無視できないことは確かである。
  日本についても、国内政治が不安定であり、自民党は再び問題を抱え、分裂状態にある。日本は依然として経済大国ではあるが、ダイナミズムを欠いており、防衛政策についても壁を徐々に乗り越えているが、予算の制約や非核三原則は変わらず、アジア諸国に脅威を与えるほどではない。日本はまだ自分自身の国際的な役割について確信を持てず、中国との関係も、経済の統合が進む一方で、懸案は領海問題くらいしか残っていないにもかかわらず、中国の競争力を恐れている。米国は日本との同盟を重視して、日本に東南アジアでの影響力を増して欲しいと考えているが、多くの東南アジア諸国は、中国の影響もあり、日本の国連安保理常任理事国入りを支持せず、日本の気持ちを傷つけた経緯がある。しかしながら、ここ数年で日米中の間の関係は、波風が立った後に、改善が見られていることに注目すべきであろう。
  今後なすべきことは、米中間および日中間の緊張を和らげて、相互の協力関係を強化することである。貿易や金融や文化のグローバル化のさらなる進展は、その方向にプラスに働く一方で、経済ナショナリズムの不満も生み出すので、米議会の保護主義をチェックするリーダーシップが鍵となるであろう。それに加えて以下の3点が、よりよい日米中関係を築く上で重要である。
  (1)日米は、オーストラリアやインドとの「価値の同盟」などによって反中国的な活動を行うべきでない。他方、中国は日本の安保理常任理事国入りへの反対を取り下げて、東アジアの雰囲気を変える必要がある。(2)日米中は三者で協議するフォーラムを立ち上げて、エネルギー、核問題、気候異変などのグローバルな課題を話し合う場をもつべきである。(3)米国の安全保障上および経済的な役割を排除しないような東アジアの政治経済的な統合を推進して、地域の安全保障体制の強化につなげるべきである。
  20世紀後半は冷戦のような二極対立が支配的であったが、21世紀は複数のパワーの台頭によって国際関係が流動化するので、多角的な政策のアプローチが必要とされている。日米中三国に、インドやロシアも交えて、アジアが今世紀の新たな大国関係を築く上での出発点となるために、協議と統合が支配する時代が一日も早く到来することを祈りたい。

英語の原文: "Triangular Relations: A Time of Opportunity"
http://www.glocom.org/debates/20080107_tri_morton/
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