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「経済文化で世界牽引 − 新・京都モデル」

今井賢一 (スタンフォード日本センター理事)


オリジナルの英文:
"Leading the World with Unique Culture - New Kyoto Model: Recognition of Creativity in Everyday Life"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20040329_imai_leading/


要 旨


現在の日本に必要なのは、世界をリードする革新を生む「経済文化都市」の育成であり、そのモデルは京都にある。

米国の社会学者リチャード・フロリダの「創造的階級の登場」という議論を窓口とすれば、世界をリードできる経済文化モデルを、京都に見いだすことができる。創造的階級の登場とは、生命科学やコンピューター技術、アートなどの仕事をする人々、それに金融、法律などにかかわる広義の創造的階層が総就業者の三割に達して社会の主流になったときに、その人たちがどのような社会を規定して行くかという議論である。ここには、従来のように、仕事がある場所に人々が集うのではなく、逆に、自らの生活の場としての生活様式、ひいては社会を規定して行くという発想がある。

フロリダによれば、これからのイノベーションは、三つの「T」によって規定される。テクノロジー(技術)、タレント(人材)、そしてトレランス(許容度)である。そして、なかでも第二と第三の組み合わせを重視する。つまり、創造的な人材を集めるには、地域社会の許容度なり自由度なりが重要である。例えばテキサス州オースティンが創造的な場になってきたと言われるが、比喩で言えば、従来型のシリコンバレー対新しいオースティンという構図である。

同じように、東京対京都を考えてみると、東京は「構造化された無秩序」であり、漠とした観察しか行えないのに対し、京都ではミクロの観察が再発見に結びつく。技術においては、京都には鮮明な個性と技術力をもつベンチャー企業が直ぐに幾つか思い浮かぶ。人材については、今日では事業所あたりの大学院生の比率が最も高いことがあげられる。そして、許容度に関しては、京都の大学が多様な外国人留学生を受け入れており、個性派の人材を生かす許容性をもたらす、という指摘がある。

一般に「創造性」というと、壮大な発明や画期的新製品が思い浮かぶが、いま求められている創造性とは、生活の場の至るところに遍在し、「個人性」を持つ人々の顔の見える相互作用の中から、新しい仕事と生活の様式を生み出すという性質のものである。人々が働き住む場所において、京都の町家のような日本的なものが情報技術と結びついて生まれ変わり、世界の人々がそこに引き寄せられて新たな価値を見いだし、異なる価値の新結合によってイノベーションを生み出していくことが、いまグローバルな世界に求められているのである。

これを実践して行くには、流れを誘導するストラテジスト(戦略家)の存在が重要であるが、一部にはその萌芽が見られつつあり、それらの人々の間の知的融合によって普遍的な経済文化的価値が世界に理解されて行くであろう。そしてそれを通じてこそ、グローバルな価値の尺度というものは、柔軟かつ多様であるべきだという共通認識が世界に広がる道筋がつけられていくのである。

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