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イラクと北朝鮮にはさまれる日本

内田健三 (東海大学教授)


オリジナルの英文:
"Caught between Iraq and a North Korean hard place"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20030407_uchida_caught/


要 旨


米英のイラク攻撃が始まった3月20日に、日本のある雑誌が「正義の実現か悪魔の目覚めか」という表題の特別号を発行し、戦争の本質を見抜くことの大切さを強調した。


戦争の開始直後は、圧倒的な優位を誇る米国の軍事力とプロパガンダ活動により、イラクは極めて短期間のうちに打ち負かされそうに見えた。しかし一週間ほど経ったあたりで、事態はそれほど単純なものではないということに世界中が気づき始めた。


イラクのサダム・フセイン大統領による過去十年間にわたる無謀な行動は、国際社会から厳しい批判を浴びてきた。国連はイラクに対し、全土にわたる大量破壊兵器査察を、米国をはじめとする国々が納得する形で受け入れるよう繰り返し要請したが、効果はなかった。


米英はこのようなイラクの対応にしびれを切らし、米国は国際社会の合意が得られるのを待たずに、イラクを倒すべく単独で行動を開始した。


この米国の取り組みは、仏・独・露・中をはじめとする国々の反発を呼んだが、小泉首相は数日間悩んだ末に米国の政策を全面的に支持することを表明した。


国際社会は、野蛮で悪辣なフセイン大統領の行動を非難しつつも、ブッシュ大統領の自己中心的で利己的な行動には嫌悪を覚えている。世界唯一の超大国による自国中心主義の発現に対し、反感と懸念を感じるのは筆者だけではないだろう。


フセイン政権はいずれ自滅崩壊するであろう。しかしその時まで、どのような混乱、死、流血などの悲惨な事態にイラクとアラブ世界が苦しまなければならないであろうか。多くの人が物質的にも心理的にも厳しい試練に直面するのである。


日本はどうか。2001年9月11日の同時多発テロ以来、世界は変わった。特に米国は変わった。ブッシュ大統領は、イラク、北朝鮮、イランの3国が「悪の枢軸」を構成すると宣言した。


小泉首相が米国によるイラク攻撃を全面的に支持した理由は、北朝鮮の存在と行動にある。日本政府としては、過去に起きた北朝鮮工作員による日本人の拉致事件を解決することを考えなければならない。日本は、韓国による北朝鮮への「太陽政策」と、武力行使を示唆するブッシュ大統領による「悪の枢軸」といった強硬派の政策の間に挟まれてしまった。


さらに、アジアの二大国、中国とロシアの存在がある。仮にイラクと中東地域に関して何らかの決着が得られたとしても、アジア地域において、米・中・露・日、そして北朝鮮と韓国の間で複雑な緊張関係が表面化するであろうことを日本政府は覚悟している。


このように、小泉首相による米国全面支持発言の背景には、北朝鮮にどのように対応して行くかに関する思惑がある。アジアの複雑な緊張関係が展開していく過程で、小泉首相がどのような采配を振るうかを国民は注視していく必要がある。

(日本語訳:浦部仁志)

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