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北朝鮮の危険なゲーム

ラルフ・コッサ (CSIS 太平洋フォーラム)


オリジナルの英文:
"Pyongyang's Dangerous Game"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20030519_cossa_pyongyang/


要 旨


先月北京で行われた米朝中協議で、北朝鮮はいったいどのような意図をもって何を認めそして何を要求したのか?実際のところは、消息筋や匿名の政府関係者の話をもとにコメントしている殆どの記者や評論家達には、そして私もわかっていない。


もちろん明らかな部分もある。北朝鮮は核兵器開発プログラムを進めていることを明確に認めることに、限りなく近づいたということである。但し、北朝鮮側は、先月北京で米国のケリー国務次官補にささやいた以外、まだ開発の事実を認めていないし、そのような疑惑(の少なくとも一部)を否定している。


北朝鮮が、ブッシュ政権によって核保有国であると認知してほしいと思う理由は幾つかある。その一つは、核兵器を所有していることにより、イラクのサダム・フセインと同じ運命をたどることを回避するための一種の保険のようなものではないかと(それが実は間違いであっても)北朝鮮は信じている節がある。もう一つの理由は、そもそも北朝鮮の主要な輸出商品は「脅迫」であること、そして、この「脅迫」が過去において援助をはじめ、海外から北朝鮮への注目を集めた唯一の「輸出商品」であることが挙げられる。


しかし、これにはいくつかの不利な側面もある。韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は就任演説の中で、北朝鮮は韓国をはじめとする諸外国と貿易を行いつつ援助を受けるか、または核開発の道を突き進むかであると述べ、両者が二者択一の関係にあることを明確にした。ロシアは、北朝鮮が核開発を進めるのであれば、他国による制裁措置に反対するという立場を見直さざるを得ないと伝え、中国は核開発が北朝鮮のためにならないと名言した。


従って、北朝鮮の狙いは、核兵器を保有していることをブッシュ政権に納得させる一方で、他の近隣諸国に対しては、事実関係を曖昧にして制裁措置を講じられることが無いようにすることであり、これが、先の北京会議で北朝鮮がケリー次官補に対してのみ耳打ちをするという行為に結びついた。


これは非常に危険なゲームである。まず、北朝鮮は、有事には韓国を大混乱に陥れるだけの軍事力を有することにより、米国の攻撃を受けないという保全手段を有している。加えて、韓国の盧武鉉政権の政策方針を踏まえれば、米国が軍事行動を起こすには韓国による同意を必要とする状況にある。しかし、北朝鮮が核の冒険主義をあまりにも強く押し出すならば、これらの制約は取り払われてしまうであろう。そして、北朝鮮が、大量に核兵器或いはその前段の濃縮ウランまたはプルトニウムを生産するという脅迫を行うことは、関係諸国をして何らかの対抗手段を取らざるを得ない状況に至らしめる最後の引き金になるかも知れない。


北朝鮮の挑発に対し、関係各国が軍事力とまでは行かなくても、制裁や非難をもって対応することは、ある段階からは、何の対応措置もとらないまま北朝鮮の核兵器輸出を許すよりは適切な戦略となろう。


諸報道で見る限り、米国は北朝鮮に対し正面から対抗しているようである。ブッシュ政権は、核に関する対北朝鮮政策は変更していないと言っている。米国としては、北朝鮮の核開発を完全に停止させ、核兵器とその製造のための資材の輸出を防止しつつ、多国間での外交的努力を続けると述べている。


次に何か起こるかは不透明である。北朝鮮からは、「かなりの」援助を見返りに核兵器開発プログラムの一部を凍結するという「大胆な提案」を行った模様であるが、これは米国には全く受け入れられないようである。今のところ北京協議に続く更なる「話し合いのための話し合い」が続く可能性が高いが、米国としては、韓国と日本が会合に加わるか、あるいは少なくとも両国からの全面的な支持が無ければ有意義な話し合いには入れないであろう。この意味で、ブッシュ大統領による盧武鉉大統領、そして小泉首相との会談は非常に重要である。


米韓両国の北朝鮮に対する政策が大きく異なると伝えられていた中での先日のブッシュ・盧武鉉会談は、非常に有意義であった。米韓は、両国関係の重要性を再認識し、両国間の政策ギャップを埋める努力を続けること、そして北朝鮮の核開発プログラムを直ちに停止させる必要があることを再確認し、外交的解決策を探る努力を表明した。


しかし盧武鉉氏としては、今後の交渉過程にどの程度関与したいかを明らかにする必要があろう。またブッシュ氏はそもそも北朝鮮が先日北京で米国に何を主張し何を要求したのか、そして米国としてどう対応するのかをより明らかにしなくてはならない。ブッシュ政権による現在の地味な外交手法は一般には好ましいが、無用な風評が立つのを回避するために何らかの施策が必要であることは明らかである。


ブッシュ政権から確固とした政策指針と今後の展開についての見通しが表明されることにより、政権内の実力者達の発言がより明瞭かつ整合性のとれたものになり、その結果として太平洋両岸の関係者にとって好ましい効果をもたらすであろう。

(日本語訳:浦部仁志)

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