GLOCOM Platform
debates Media Reviews Tech Reviews Special Topics Books & Journals
Newsletters
(Japanese)
Summary Page
(Japanese)
Search with Google
Home > Summary Page > 詳しい記事 BACK

「日本の潜在成長力は過小評価されている」

土志田征一 (専修大学教授)


オリジナルの英文:
"Underestimated Growth Potential of Japan"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20040322_toshida_underestimated/


要 旨


景気回復への期待がなかなか盛り上がらないが、それには日本経済の成長力について悲観的になっていることが影響している。潜在成長力の議論が混乱しているため分かり難くなっている面もあり、論点の整理が必要である。

成長率を供給面から分析する場合には、一般に「成長会計」の手法が用いられる。1990年代の平均経済成長率は1.3%であったが、この手法をもとに計算すると、資本ストックの増加と労働投入の減少はほぼ相殺されるから、残りの総要素生産性の上昇は1〜1.5%程度と計算される。これを元に2000-2010年を展望すると、労働力人口の減少はあるが、失業率低下、正規労働者の回復などで労働投入量の減少は小幅にとどまり、設備投資の回復から資本ストックの増加は高まることが期待される。総要素生産性の上昇が変わらないとすると、潜在成長率は1%台後半に高まるという見方ができる。

しかしながら、総要素生産性の計算には、過小推計の可能性がある。2000年当時には、過剰雇用、過剰設備が問題視されていたから、その部分は十分に生かされていなかったはずである。仮に、2000年には9割の力しか発揮できていなかったとすれば、90年代にさらに年1%は生産性上昇が可能であったことになる。元来、成長会計の手法は、中期的な成長経路に沿って経済が成長していて、景気の波はその上下に生じる姿を対象にしている。90年代のような不況期の実績から求めた生産性上昇をそのまま将来予測に使うのは、低迷の持続を前提にしてしまっているに等しいのではないか。

こうして、供給面から見れば、一般にいわれるより、日本経済の成長力は高いと考えられる。この数年、効率化による生産性向上こそ日本経済の最重要課題と位置づけられてきたが、供給面からみればでは生産性は高まっている。従って、供給効率化ではなく、需要創出が最大の政策対象にならなければならない。

 サマリーページへ
 Top
TOP BACK HOME
Copyright © Japanese Institute of Global Communications